バタバタと階段を駆け上がり、自室に入る。

バタンっとこんなにも乱暴にドアを閉めたのは初めてかもしれない。



「⋯ううっ、う゛~っ⋯、」



そのままドアに背をつけて崩れ落ちる様にしゃがみ込んだ。浴衣が皺になるのだって気にならなかった。


抱えた膝に次々に落ちていく涙。

視界はもう、グチャグチャだった。



「なんでっ⋯、なんでっ、」



わたしはこんな家に生まれてしまったのだろう。

どうしてお父さん達はわたしの気持ちを優先してくれないのだろう。


わかってはいるんだ。

わたしが我儘なのだと。

お父さん達にわたしの事を一番に考えて欲しいと願いつつも、一之瀬グループと手を組まなければ会社にとって多くの損失が出る事も理解している。


その打開策もなければ、責任だって追うことも出来ない。


それなのにお父さん達にどうにかして欲しいと思うこと自体がお父さんに言われた通り“子ども”なのだと、頭の隅ではわかってはいるんだ。


だけど、どうしたって譲れないの。諦められないの。


この家に生まれた時点で将来が縛り付けられてしまう事を、ついこの間まで理解していたはずなのに。仕方ないって諦められていたはずなのに。



「ミナトっ⋯」



ミナトに出会って、世界が変わった。


絶対に、何があってもあの手を離したくない。