「さくら。何度も言っただろう」

「わたしだって何度も言ったよ。わたしの将来はわたしのものだって。好きな気持ちに嘘はつけないよ、お父さん」

「⋯もういい。早く家に入りなさい」

「そうやってすぐ逃げないで!ちゃんとわたしを見てよ!」



お父さんに反抗し抗うわたし達はまさに目の上の瘤だろう。煩わしくて仕方ないだろう。

だけど、見てよ、お父さん。

今、わたし達が繋いでいる手を見て。わたし達の目を見て。ちゃんと、見てよ。ねぇ。



「現実は変えられない。お前はこの家に生まれた責務を全うしなくてはならない」

「そんなの関係ないっ!」

「これだからお前は子どもなんだ。何が最善の選択なのかまるで理解していない。お前の方こそ現実を見たらどうだ?」

「なによっ、それ⋯」



別れろ、別れろ、別れろ。

否定するばかりで拒むばかりで、現実を見ていないのはお父さんの方なのに。

凛也さんとミナト。どちらを選んだ方が幸せかなんて一目瞭然なのに。

まるで噛み合わない。まるで全く別のものを見ている様にお父さんの考えが理解出来ない。




「有馬さん。御自宅までお送りしましょう」



悔しさを滲ませるわたしを横目にお父さんは今自分が乗っていた車の方へと指示を送る。



「いえ、お気遣いなく⋯」

「娘を送っていただいたお礼です。遠慮なく。さくら、お前も早く家に入りなさい」

「ちょっと⋯!」



そして断るミナトを半ば強引に車へと乗せると、わたしの腕を引き家の門を潜った。


引き裂かれる様にして終わりを告げた夜。

花火を見上げていた頃はまさか今日、こんな風にミナトと分かれる事になるなんて夢にも思っていなかった。