その時だった。
車のヘッドライトがまるでスポットライトの様にわたし達を照らし出したのは。
「っ!」
一瞬、通行する車のライトだと思ったそれはいつまでもわたし達の横を通過する事なく二人を照らし続けていて、おかしいな、と思ったのとライトの先を目を細めて視界に入れたその車体に見覚えを感じたのは殆ど同時だったと思う。
「ミナト、」
焦る様にミナトの服の袖を掴んだのは、どうしてだろう。
何も悪いことなんてしていないはずなのに。
どんな理不尽にも負けたくないと思っていたはずなのに。
感じてしまった罪悪感は一体、誰に対してなんだろう。
「さく、「さくら────」」
ミナトの声を遮る様に重く低い声を発したのは、未だにわたし達を照らし出す車からゆっくりと降りて来た人物、つまり、お父さんだった。
「お前、こんなところで何をしているんだ?」
父の表情はいつもと変わらない無表情で。
だけどその声色は、震える程冷たいものだった。



