きっと唇を重ねていた時間は十秒にも満たなかったと思う。
それでもわたしにはその十秒にも満たない時間が永遠の様に感じた。
「⋯っ」
ゆっくりと唇を離した直後、至近距離のミナトの顔にドキドキして、至近距離のまま交わった瞳に胸が締め付けられる。
緊張とドキドキで胸が痛くなる事ってあるんだって事を初めて知った。
「ミナト⋯、」
ミナトからしたら花火を見ていたら急にわたしにキスをされたわけで、見開かれたままの瞳がゆっくりと瞬きをした。
今ミナトの瞳に映っているのは美しい花火ではない。
ただのわたしだ。
「ミナト、」
驚いたまま何も言葉を発しようとしないミナトの名前をもう一度呼ぶ。
後先考えずにキスしてしまったけれどもしかして嫌だったとか?
そんな事ないと思いたいけれど、雰囲気も何もなくしてしまったし⋯。と縋るようにミナトを見上げれば、ミナトの瞳はそのままわたしの事を捉えていて─────。
「さくら」
静かに名前を呼ぶミナトの声は、いつのまにか全てが打ち上がった後の公園にしっかり響いた。



