「お嬢様、とてもお綺麗です!」
「へへ、本当?」
「はいっ!可愛らしくてお綺麗で、さすがお嬢様ですわ」
幸い朝からお父さんとお母さんは会社に行っていて今日は夜まで帰って来ない。
それをいい事にわたしはお手伝いさん達にお願いをして浴衣を用意してもらったのだ。
髪の毛も可愛くスタイリングしてもらう。
普段パーティーなどの時にもお願いしているその腕はプロ級で、お団子にしてもらった髪の毛は絶妙なアレンジと白と赤い椿の浴衣に合う髪飾りをセレクトしてもらい、完璧に仕上げてもらった。
「皆のおかげだよ、ありがとう!」
「何を仰います、素材が良いからこんなにも素敵に仕上がるのですよ」
「ありがとう」
「今日の花火大会で一番可愛いのはお嬢さま間違い無しです!」
「大袈裟だなあ」
へへへと笑うわたしを我が子の様に微笑んで見つめているお手伝いさん達に「本当にありがとうね、いってきます」と告げて家を出る。
「凛也さんとお出かけかしらね?」
家を出る間際、後ろからそんな声が聞こえる。今日は花火大会に行くとだけ伝えていたから誰とまでとは言っていなかったけど、そうか、凛也さんと行くと思われていたのか。
⋯もし、彼女たちはわたしが凛也さんではない男の人と花火大会に行くと告げれば止めるのだろうか。
きっとそうだろう。
わたしとミナトの事を応援してくれる人はきっと、いないのかもしれない。



