「納得している⋯と断言出来るわけではないが、それでいいとは思っている」
「それって⋯」
「受け入れてはいるという事だ」
納得する事と受け入れる事。
それは同じに見えて全然違うものだという事はわたしにもわかる。
会社の為、好きでもない人と結婚する。
それは到底納得は出来る事ではないけれどそれ以外に道がないわたし達。
受け入れる=諦める。そういう事なのだ。
「率直に言わせていただきます、」
凛也さんもこの結婚を納得はしていないのだと知り更に希望が見える。
もしかしたら、この婚約を白紙にする事が出来るかもしれない。
四面楚歌だった状況から一筋の光が射し込んでいる気がした。
「わたしはこの婚約の話を受け入れたくはありません」
「⋯つまり、婚約を解消したいと?」
「はい」
「理由は」
「⋯⋯自分の人生は自分で決めたいからです」
「⋯そうか」
さすがにミナトの事を話すことはしなかった。だけど自分の人生を自分で決めたいという気持ちに嘘はない。
将来を共にしたい相手も、自分で決めたいから。
再び沈黙が二人の間に訪れる。
凛也さんが何を考えているのか、その顔を見てもわからない。
ドクドクと速くなる鼓動。
テーブルの下で握りしめた手のひらにはじんわりと汗が滲んでいた。



