「店の中だぞ」
「すみませんっ⋯でも凛也さんが変なこと言うから⋯」
「ただの冗談だろ」
「凛也さんは冗談とかっていうキャラじゃないじゃないですか⋯」
いつも不機嫌そうで、冷徹で。
今だって声は低いし表情だって普段と特別変わった様子はないのに口数が多いせいで調子が狂ってしまう。
「本当に、真面目な話です」
「⋯」
「お互いの会社の為だけのこの結婚、納得してますか?」
真っ直ぐと彼の目を見て発した言葉。
その声は自分でもわかる程強い意志を持っていたと思う。
それは凛也さんにも伝わったのだろう。
数秒の沈黙の後ゆっくりと声を発した凛也さんの表情もまた、真剣なものだった。



