「それは女性も同じだ。少しでも己の立場をよく見せたいのなら、身だしなみには気をつけた方がいい」
「⋯」
「顔立ちや体型を差別しているわけじゃない。社交界には底意地の悪い奴らもいる。ずる賢い奴らもゴロゴロと。成り上がりの品の欠片もない人間だっている」
「⋯はい」
「そこで見下されては自分の家に傷がついてしまう。そうならない為に、俺たちは頭を働かせなければいけない。外見だって整えなければいけない。家を守る為に、周りから見下されてはいけないんだ」
「⋯凛也さんも家が大切ですか?」
発した声は、どこか冷めていた様に思う。
別に凛也さんが家を大切に思っているのは悪い事ではないのに、もし肯定されてしまったら凄く、ガッカリしただろう。
だけど凛也さんから発せられた言葉は想像とはまるで違うもので──────。
「あんなクソみないな家が大切?笑わせるな」
それはどこまでも冷徹で、嫌悪と憎悪が混ざった、そんな声だった。



