「さくら?」
ミナト。
「さくら?もしもーし」
ミナト。
ミナト。
今日一日ピンと張っていた糸が解け、ミナトの声に涙が溢れそうになる。
今声を発してしまえば泣いてしまいそうで黙ったままのわたしに電話の向こうのミナトが不思議そうに戸惑っているのがわかった。
「さくら?聞こえてる?」
どうしてこんなにも違うんだろう。
同じ男の人の声なのに、凛也さんとは声の高さも話し方も全然違う。
凛也さんよりも僅かに高く甘さを含んだミナトの声は。
凛也さんよりもゆっくりとした穏やかな話し方は。
痛いくらいにわたしの心を抱きしめてくれている様な気になるの。
ミナトの声を聞いただけで抱きしめられている様な心地になるの。
「⋯っ、ミナト」
漸く発した声は若干震えてしまったけれどこれ以上ミナトを困らせるわけにはいかないともう一度ミナトの名前を呼んだ。



