暫くして車が停まったのは高級なフレンチのお店だった。
わたしが何も言わなかったからか、最低限のエスコートをしてくれる凛也さんは美術館を出る前よりも不機嫌な気がした。
「ここも合わないか」
「え⋯?」
「顰めっ面をされてはこっちも食事が不味くなると言っているんだ」
カチャカチャとナイフとフォークの音だけが虚しく響く。
“も”と言っている辺り、わたしは凛也さんといる時常に顰めっ面をしているのかもしれない。
「すみません⋯」
わたしだって好きで貴方といるんじゃない。
嫌ならさっさとこんな女捨ててくれていいのに。
凛也さんは何も悪くないとわかってはいるのにそんな性格の悪い考えばかりが溢れてきて謝るしか出来なかった。
実際、こんなわたしと食事をするのは何も楽しくないだろうしせっかくのフレンチも不味くなってしまうのは事実だろうから。
「凛也、さん」
「何だ」
「すみません」
「⋯」
もう一度そう告げたわたしに凛也さんは何も言うことなくそのまま食事を続けた。



