「今日はどちらに?」
凛也さんと会う日、家まで車で迎えに来てくれて車に乗り込むと凛也さんは運転手の方に合図をした。
静かに発進する車の中、聞いてみると凛也さんが黒い瞳をゆっくりとわたしに向けた。
「美術館だ」
「美術館…」
「嫌なのか?」
ポツリと呟いたわたしが不満に思ったと思ったのか凛也さんの声が少し低くなった。
「いえ…、久しぶりだなって思っただけです」
「久しぶり?」
「はい、小さい頃に母に連れて行ってもらった思い出があって」
「そうか」
子どもの頃はお母さんに連れられてよく美術館に行った記憶がある。
綺麗な絵や美術品がたくさん展示してあって子どもの頃は夢のような場所だったな。
静かに走る車内で懐かしい記憶を思い出していた。