「ごめんね…」

わたしはそう謝る事しか出来ない。


「さくらが謝る事じゃない」

「でも……ごめんなさい」


ミナトが謝らなくていいと言っても謝るわたしにミナトはわたしの手をそっと握った。


あの雨の海の時とは違う、温かいミナトの手。


「大丈夫」と言われてる様な、守られている様な感覚になった。



「謝るのは俺の方」

「…そんな事ないよっ」


手を握ったままそう言ったミナトに驚いて咄嗟に否定する。

だってミナトが謝らないといけない事なんて一つもない。


「さくらにばっかり苦しい思いさせてる」

「………っ」

「ごめん…」

「………そんな事…ない」


ミナトはどこまで優しいんだろう。
許嫁がいるのはわたしで。
苦しいのはミナトの方なのに…。


「…わたし、ずっとミナトの事考えてるよ」


ミナトの手をわたしも握り返しながら言った。



「学校でも家でもずっとミナトの事考えてる」

「………」

「おかしいかもしれないけど、ミナトの事ばっかり考えちゃうの」


そうは言いながらも恥ずかしくて目線をミナトから外すとミナトは軽く微笑んだ。


そして、握った手をさらに強く握った。



「誰といても、ミナトの事考えてるからっ…」



強く手を握りしめ、わたしの思いを告げた。