「まだ、婚約を破棄する事も今は出来なくて…」
「うん」
「会社の事もあって、相手の方と…、」
ミナトにこんな事言いたくない。
言いたくないけど、黙ってる訳にもいかない。
「会わなくちゃいけない事が、これからもあるの」
服の裾をギュッと握ってミナトの言葉を待つ。
「……」
ミナトは黙ったまま、その表情は言葉を探している様にも見える。
悲しませてる、傷つけてる、困らせてる…
胸がギュッと締め付けられるように痛い。
苦しくて顔を歪めたわたしにミナトが言葉を発した。
「うん、分かった」
「………、」
ミナトは一言、たった一言そう言った。
その「分かった」という言葉にミナトの色んな感情が込められている事に気づいた。
苦しめてる。
わたしがミナトを、苦しめてる。



