「好きな人がいる」そう言った時お母さんは少しだけ目を大きくさせた。


そしてお父さんは目を細めてその厳しそうな顔をさらに厳しくした。





「何を言っているのか分かってるのか」


お父さんの声はさっきよりも厳しさを増した。

だけどそれに負けじとわたしもお父さんを真っ直ぐ見る。



「分かってる。分かってて言ってる」


「……」



お父さんはジッとわたしを見つめ返す。



「わたしその人が好きなの、一緒にいたいの」


わたしの気持ちを言う。


だけどお父さんは

「さくら、」

と首を横にふる。



どうして、分かってくれないの、




「彼も…そう言ってくれた」



そう言った瞬間、今初めてお父さんの瞳が揺れた。