月下の輪廻

シュヴァイツがこちらを肩越しに振り向く。

漆黒のように黒い髪に黒い瞳。着ている物も、黒を基調としたものだった。不敵な笑みが口元に浮かんでいる。


「女。テメェは俺の転生体だ」

「え......?」


ドクン、と鼓動が脈打つ。

《転生体? 私が? だってこの男は......》

訝しげな眼差しを向けてしまう。どういう意味だろうか。知ってか知らずか、シュヴァイツが再び言葉を紡いだ。


「お前が見たものは俺の過去の記憶。あちこちに飛び散っちまった記憶の欠片......魂の断片だ」

「そんな......っ」


信じられる訳がない。

でも。

自分の中に流れ込んできた憎悪の感情も否定が出来ない。

《私が、吸血鬼の、この男の生まれ変わり......?》

それでは、どうあっても自分は騎士として王家に仕える事は出来なくなってしまう。

今までの鍛練は何だったのだろうか。

言葉に詰まって黙っていると、玉座から立ち上がったシュヴァイツが近付いてきて、手を伸ばされて顎を捕らえてきては仰反かされてしまう。真っ直ぐに見詰めてくる黒い瞳には憎しみしか無かった。