月下の輪廻

「ーーっ!! くそ......くそがぁあーーっ!!」


雷鳴と共に叫ぶシュヴァイツ。

アレンという男と、それに付き従う者達は去って行く。空を飛んで......。

人間ではない。

吸血鬼。

自分は、夢でも見ているのだろうか。

《でも、それならこの怒りは......?》

自身の胸の内に渦巻く憎しみと恨みは薄れるどころか、嫌という程、深く刻み込まれてしまう。

すると、急に場面が変わる。

夢のようだが、不思議と夢ではないと感じた。

まるで大きな城の玉座のような場に腰を下ろす。多くの者達が平伏していた。

《今度は、何?》

今は混乱よりも、先が知りたいと思う。


「くく......っ、この策はダグラス。テメェに任せるぜ」

「御意」

「吸血鬼の王は、この俺一人だけだ......くっ、あはははっ!」


吸血鬼の王。

玉座の間と思しき広い間に響く笑い声。

平伏する者達。

何故だろう。

不思議と違和感を覚えない。

《私は、この光景を知っている?》

まるで、自分が笑っているかのようだ。戸惑っていると、平伏する者達が静止画のように動かなくなる。気付けば、自分の意識と体は男から切り離され、玉座の後ろに立っていた。