月下の輪廻

「良い心掛けだ」


自然と口元が綻ぶ。

陽に照らされてはいるものの、昨日よりは風がやや強い。伸びた黒髪が風にたなびく。

《昔は短かったな》

3年も知らずにいたら、いつの間にか腰の辺りまで伸びてしまった。

歩いてギルド『マルシェ』に着き、扉を開いて中へと入って行く。入るなり、受付のルギィが真っ先にディアスに満面の笑みを向けた。


「あらぁ~、いらっしゃい。待ってたわよぉ、ディアス君❤」

「ど、どうも」


目がハートになる、というのはこういう時に言うのだろうか。

弛みきった目元で頬を染め、くねくねと腰をくねらせている。

《男を誘惑する女......いや、男はこうなるのか?》

リーファネルが受付に近付くと、斜め後ろをディアスがついて来た。まるで犬のようだ。


「おはよう、ルギィ。訓練場に行けば良いのか?」

「おはよう、リーファ。ええ、そうよ。支部長と目が利く人が見てくれるって待っているわ。裏へどうぞ。......ディアス君、頑張ってね❤」

「はい」


ギルド所有の訓練場。

初めて冒険者になる人、ランク上げをする人がその実力を見せる場だ。