月下の輪廻

カランカラン......

日が沈みかけ黄昏の空が建物内も朱に染める。

リーファネルは袋を手に持ち、受付へと近付いて行くが、ルギィの姿が見当たらない。支部長の部屋である2階にでも行っているのだろうか。声を掛けようと息を吸ったところで、すぐに階段からルギィが下りてきた。


「あら、リーファったら相変わらず仕事が早いのねーーって」


ルギィの視線が自分から逸れ、扉の前に立っていたディアスへと向く。

一瞬動きを止めたがすぐに艶のある意味ありげな笑みを向け、自分の手を掴んで引っ張ってきた。

ディアスから少し距離を取り、顔をくっつけるようにして小声で話し掛けてくる。


「ちょっと! 私はフリクス草を採ってこいっていう依頼書を渡したのよ? 男を釣ってこいなんて言ってないわ!」

「釣ってないし、フリクス草はちゃんと採ってきた」


ほら、と袋の中身を見せるが、ルギィの表情に納得した様子は見られない。


「それじゃあ、あのイケメン君はリーファが連れてきた訳じゃないの?」

「......森に居たが、ここに用があるから連れてきたまでだ。変な勘繰りはしないでくれ」


そう言うと、漸く離れてくれ受付の場に立つルギィ。

リーファネルも受付の所へ戻って袋ごと手渡した。