月下の輪廻

「いや、でも......」

「女だから、か?」

「うん」

「過ぎた心配だな。私はそこら辺の男よりは強い。......男とか女とか、私にとってはどうでも良いことだ......」


後半の言葉は聞き取りづらいように呟いた。案の定、「え?」と訊き返される。


「何でもない。そう言えば、『マルシェ』に顔を出した事はあるのか?」

「え? ああ、いや。まだ行った事無いんだ。どんな所?」

「......受付に居る人がとても美人だぞ」

「えっ?」


こういう話に若干頬を赤くして反応するところは男らしい。

《まぁ、美人は美人でも、男だけどな》

そう思いながらも、どこかで面白そうだから黙っておこうという気持ちが湧く。

ワクワクするのはいつ振りだろうか。久しく感じた事が無い。

楽しみを胸に秘め、日が完全に暮れてしまわない内に戻ろうと、二人でラファル村へと急いだ。