月下の輪廻

紐を肩に掛けて帰路に着く。


「あのさ、リーファネル」

「何だ?」


今度は隣を歩くディアスが、チラチラとこちらを見てきては気まずげに言葉を紡ぐ。


「......少し、その......薄着過ぎない?」

「......」


《成程な》

女である自分がお腹を出し、短いパンツを穿いている格好を見て気まずくなっている、ということか。

3年前に蘇ったシュヴァイツとしての記憶のせいで、男だとか女だとか、そういう意識そのものが鈍ってしまっていた。一人旅というのも、それに拍車を駆けている。

ルギィにも、女なんだから、とか何とか、何度同じ説教をされたか知れない。

《まぁ、でも......今更だな》

どのみち、ディアスともラファル村のギルド『マルシェ』までの付き合いだ。殊更、気にする必要も無いだろう。

《下手な真似をするようなら、締め上げれば良いしな》

うん、と一人心の中で納得し、前方へ視線を向けながら口を開く。


「寒ければ厚着もするが、今は暖かいし、軽装の方が動き易いからな」