月下の輪廻

物は言いようだ。

怪我の手当ては単に怪我をしていたからであり、そもそも、冒険者とて民を護るギルドという組織に加入しているからである。それに、先程の言葉もディアスの無謀な行動に呆れて発言しただけである。

ニッと白い歯を見せて笑みを向けてくるディアスには、何を言っても楽観的にしか捉えないのだろう。

思わず脱力してしまい、リーファネルは、ぽかんと口を開けてしまう。


「? リーファネル。フリクス草を早く調達して村へ行こう」

「あ、ああ......」


首を傾げてから真顔で急かされ、顔を前方に向けて、再び森の中を目指す。......とは言っても、ここからそれ程距離は無く、すぐにフリクス草が生えている場所を目視出来る木陰に身を隠した。

《居るな》

魔物だ。大きな切り株のような魔物が一体、フリクス草の周りをゆっくりとうろついている。


「あれが強力な魔物?」

「だろうな」


気付かれないよう小声で話す。

《動きは遅いが油断は出来ないな》


「ディアス。お前はここに居ろ。あれは私が片付ける」