月下の輪廻

「フリクス草の近くには強力な魔物が出るらしい。本来ならA級以上の実力が求められる依頼だぞ。お人好しも良いが、自身の実力も知らずこんな所まで来るものじゃない」

「リーファネルって優しいんだな」

「......は?」


今、何と言っただろうか。

少ししか進んでいないが、リーファネルは、足を止めてディアスを振り仰ぐ。

《私が、優しい?》

穏やかな笑みを向けてくるディアスを訝しげな眼差しで見詰める。

騎士の家系で生まれ育ち、あの日までは心に穏やかさも確かに持っていた。

でも。

大昔の吸血鬼ーーシュヴァイツの記憶が蘇り、その生まれ変わりである事を知り、心には憎しみという強い感情が増大した。

記憶の欠片を一つずつ見付けて蘇る度、それが顕著になったのだ。

シュヴァイツの記憶を知る度間違っていると思うが、どうしても共感してしまう自分も居る。そんな自分を、どうして優しいと評するのだろうか。


「だって、会ったばかりの俺の怪我の手当てをしてくれたり、さっきの言葉も俺の身を案じて言ってくれたんだろう?」

「......」