月下の輪廻

「私はリーファネル。リーファネル=コールランド。Sランク冒険者でここにはフリクス草を調達しに来た」


挨拶は済んだので手を離そうとすると、またしてもぎゅっと掴まれてしまう。痛くはないが力が強い。


「俺も! 俺も調達を手伝うから連れて行ってくれ!」

「断る。お前は村へ行け」

「頼む! 目的は同じなんだし、リーファネルはそれを村のギルドへ持って行くんだろう? だから、な?」

「......」


《この男は......》

悪い男ではないのだろうが、何と言うか、はっきり言って鬱陶しい。


「ギルドで俺も冒険者ライセンスが欲しいし、良いだろ?」

「......分かったから、いい加減手を離せ」

「あ、ごめん」


仕方なしに頷くと、漸くディアスは握っていた手を離し、あまり悪びれた様子も無く「へへっ」と笑いを漏らしながら首の後ろを掻く。表情がころころ変わり、まるで子供のようだ。

リーファネルは怒る気力も失せ、森の奥へ向かって歩き出す。その後ろからディアスがついて来た。