月下の輪廻

全てを斬り倒した頃には、男は剣を持ったままへたり込んでいて、驚いたような表情でこちらを見ていた。よく見ると、頬や腕や手に怪我をしている。


「大丈夫か?」

「......あ、ああ......」


目の前に屈んで訊ねると、掠れたような声で頷いて、決まりが悪そうに剣から手を離して視線を逸らされる。助けられたことが気まずいのだろうか。

リーファネルは傷薬を腰に掛けたポシェットから取り出し、男の頬や腕、手に塗っていく。痛かったのか、ビクッと肩が跳ねて弾かれたように視線をこちらに向けてきた。


「案ずるな。傷薬だ」

「あ、ありがとう」


こちらを見る青い瞳は綺麗でとても澄んでいた。リーファネルも微笑を浮かべる。

薬を塗って布で巻いて手当てを終えると、徐に手首を掴まれて目を見張った。


「なぁ、あんた、冒険者か?」

「......」


どこか期待に満ちた眼差し。

突然の行動には驚いてしまったが、リーファネルは、そっと男の手を離してその場に立つ。