月下の輪廻

魔物が入って来られないように修道女が張った結界を抜け、シンラの森へと向かって歩き出す。

ラファル村から北東の方角にある、木々や草花が生え、動物も生息しているシンラの森。

入り口付近には強力な魔物などはいない。

リーファネルは森の中に入り、奥にあると言うフリクス草が生えている場所へと進んで行く。

《気持ちが良いな》

騎士にならずに冒険者となり、記憶の欠片探し以外で自然の中を歩いて息を吸うと、空気が澄んでいて肩の荷も無いから、余計に気持ち良さを感じる。

鳥の鳴き声や、小動物が木の実を食べている姿などを見たり聞いたりしていると、自然と口元が綻ぶ。

魔物も居るが、こちらから仕掛けたりしなければ、敢えて襲ってきたりもしないようだ。

木漏れ日の差し込む森の中を進んでいると、遠くの方で何頭かの魔物が何かを囲むようにしていた。森の奥だ。リーファネルは剣の柄を手で握り、前方の様子を見据えて足早に近付いていく。

ある程度近付き、囲まれていたものが何か分かった。人だ。

何故、こんな森の奥に人が居るのだろうか。しかも一人で。

魔物は全部で5頭。獣のような鋭い唸り声で威嚇している。囲まれている人は男で剣を握ってはいても震えているようだった。

《まずいっ!》

このままでは男は一気に襲われて殺られてしまう。

リーファネルは一気に駆け出して剣を抜き、一番近くにいた魔物を薙ぎ払うように斬った。残りの4頭がすぐに標的を自分に変える。鋭い爪で襲い掛かってきて後ろに飛び退く。

《これで良い》

リーファネルは囲まれる前に素早く移動して一頭ずつ斬り倒す。