月下の輪廻

水浴びではやはり汚れは落としきれない。

躊躇いが無かった訳ではないが、入ってしまえば、やはり癒されるようでほっと息が漏れる。

《依頼を済ませた後で、と思っていたがな......》

別にお風呂が嫌いな訳ではない。寧ろ好きだ。ただ入る暇が無かっただけで。

十分に体が温まってから、リーファネルは体と髪を拭き、服を着直して武具を身に着ける。出ていくと、受付でルギィが男に依頼書を渡していた。見送っては手を振っていたところへ近付く。


「綺麗にしてきたかしら?」

「ああ、ありがとう。本当は依頼を受けてお金を得てから、と思っていたんだが」

「相っ変わらず女らしくしないのねぇ~、リーファは。......まぁ、良いわ。S級のあんたに丁度頼みたい依頼もあったしね」


そう言いながら、ランク分けされた依頼書の束から1枚の依頼書を抜き取り、ルギィから渡されて内容へと目を通す。


「......フリクスの薬草の採取?」


フリクスという草は薬草として使われている草だ。確か、このラファル村の近くのシンラの森に生えている。

調達しに行くだけならS級でなくてもいい気がするが......。

首を傾げていると、ルギィが一人納得したように「ああ」と言葉を漏らす。


「そう言えば、リーファにはシンラの森のフリクス草を採りに行ってもらったことは無かったわね?」