アレンは盛大な溜め息を吐く。それから、鋭い眼差しで見据えられた。


「お前が気に入ろうが気に食わなかろうが、これは既に決まっている事だ。幾ら力が強かろうが、お前は俺に勝てはしない」


そう言い残して脇をすり抜けていくアレン。

シュヴァイツは奥歯を噛み締め、肩越しにその背を睨み付けた。

《俺は絶対にテメェから玉座を奪い取ってやるっ!》






記憶はそこで途切れた。

リーファネルは剣を床に突き立て、片膝をつきながら、乱れた呼吸を整えようと深呼吸を繰り返す。

ドラゴンナイトとの戦闘で疲弊したのもあるが、記憶が一つ蘇る度に激しい頭痛に襲われ、直後は立っている事も儘ならない。

でも。

今はチグハグなピースのようながらも、シュヴァイツの事が何となく分かってきた気がする。

シュヴァイツの記憶の欠片に多く現れるアレンという男。

アレンに対する憎しみ。

そして今の記憶を見る限り、気に入らないからと、一方的に憎しみを募らせていったのだろう。

《玉座を欲しいがままに、反旗を翻そうとでもしたのか?》

皮肉めいた笑みが口元に浮かぶ。すると、重い音とともに、再び扉が開き出した。リーファネルは立ち上がって剣を鞘へと戻す。