月下の輪廻

必死に言い募ってみると、再び訪れる静寂。

窓の外には月が半分ほど欠けて見えていた。

どれくらい沈黙が続いただろうか。おそらく、それ程長くはないのだろうが、空気が重い為か、数時間と経ったように思う。

やがて、組んでいた腕を解いた父が諦めたように大きく息を吐く。


「......ギルドなら、ここから東の村のラファル村に『マルシェ』というのがある。そこでライセンスを取得すれば、何処のギルドの依頼を受けるのも可能だ」


ギルドに所属し、記憶探しの旅を認めるという話だろうか。

しっかり聞こうと、リーファネルは、改めて姿勢を正す。


「依頼の内容はランクによって異なる。......騎士にならずに冒険者となるのなら、せめて居所を分かるようにしておくこと。吸血鬼とかその記憶とか、儂らにとってはそんな事はどうでも良い」


言いながら、母が握ってくれている手に、父も手を重ねて握ってくる。温かい。

真っ直ぐにこちらを見詰めてくる瞳には、ただただ心配という色が分かり易い程映っていた。

《お父様......》


「リーファネル。お前は儂らの大切な娘だ」

「そうよ。リーファ」


そうだ。自分はこのコールランド家の子。吸血鬼の生まれ変わりであってもその事実に変わりはない。