月下の輪廻

《きちんと話さなくては......》

落ち着こうと、まずはゆっくりと息を吸ってゆっくりと吐く。

明かりを点してあるが、夜の闇が部屋の中にまで広がってきた気がした。

リーファネルは二人を交互に見詰めて口を開く。


「実は......いいえ。お父様は、吸血鬼って知っていますか?」


何から話して良いのか分からず、紡いだ言葉は吸血鬼のこと。

これも唐突だとは思ったが、瞬きを繰り返していた父は戸惑いながらも口を開いた。


「......吸血鬼は大昔に滅んだと訊いているが......それがどうしたんだ?」


当然と言うべきだろうか。

訝しげな眼差しを両親に向けられ訊き返されてしまう。

《大昔に滅んだ......》

言っても良いのか逡巡した後、リーファネルは、両手をぎゅっと握り合わせ、肩を強張らせては語り出す。


「あの......3日前に倒れた時、夢を......いいえ。吸血鬼だった頃の記憶が自分の中に蘇ったんです」

「きーーっ!?」

「吸血鬼だった頃の、記憶?」


母は悲鳴に似た声を上げそうになって口元を手で覆い、父は何を言っているのか分からないと言うように、言葉を返してきては頻りに瞬きを繰り返し、口をぽかりと開けてしまっている。