月下の輪廻

仮に騎士にならないとしても、街の外へと記憶探しの旅に出るなら、魔物と闘う腕がなくてはならない。その為にも鍛えてきた訳だが、実を言えば、実践経験がまるで無い。その事も不安の種の1つだった。

はぁ......と思わず盛大な溜め息を吐く。

1度、頭の天辺まで湯に浸かり、意を決して勢いよくその場に立つ。


「よしっ」


湯浴みを済ませて着替え、リーファネルは、自身の部屋ではなく両親の私室へと向かった。回廊には、騎士の甲冑も飾ってある。絵師に描かせた家族揃っての絵画も飾ってあった。

広間の階段を上った左右に分かれた道を左へ進む。2つある扉の奥の前に立ちノックをした。すぐに返事がして扉を開けると、父と母がソファーに座っていた。


「どうした? リーファネル」

「......少し、お話がしたくて......」


穏やかな声音に問い掛けられ、それだけ答えると、傍に座るよう促されて隣に腰を下ろす。


「そうか。......体調はもう良いのか?」

「はい。寝過ぎたようで、今はあまり眠くなりませんが」


冗談混じりに言ってはみるが、微かに手が震えるので、ぎゅっと膝の上で握り合わせる。

両親の前できちんと笑みを浮かべられているだろうか。