月下の輪廻

「さあ、温かい内に食べなさい」

「はい」


母に促され、頷きながら受け取る。

食欲がそれ程あった訳ではないが、一口食べてみると、二口も三口も、いつものように平らげていくことが出来た。





夜の湯浴み中。

頭と体を洗い流し、湯に浸かりながら、リーファネルは天井を仰いで息を吐く。

夕刻に帰って来た父と兄は安堵して、目覚めて食事も摂れたことをとても喜んでくれた。

嬉しい筈なのに素直に喜べない。

時間が経つ度に、シュヴァイツの顔が鮮明に頭の中に浮かぶ。

夢ではないのだと告げるかのように。


「......記憶の、欠片か......」


一人、掠れた声で呟いた言葉は、お風呂場に響くことなく消えていく。

騎士を目指してきたが、記憶の欠片を探すのなら、諦めなければならない。

でも。

もう少しで王家に仕える事が決まったと言うのに、果たして辞める事が出来るのだろうか。

父には、吸血鬼の生まれ変わりだと告げなければならない。

信じてもらえるかは分からないが......。