月下の輪廻

気遣わしげな優しい言葉と声音に、今更ながらに喉が渇いていた事に気付く。お腹も空いた。

はい、と掠れた声で頷くと、使用人が「すぐにお持ちします」と言って下がって行く。


「......とても心配したのよ。3日前、あなたはいつものように剣の稽古と言って外に出て、なかなか戻らないから呼びに行ったら倒れていたのだもの。......覚えていて?」

「はい......。木刀で鍛練をしていたら、頭痛がして......もう少しで正式に騎士として王家に仕えることで、どこか気を張り詰め過ぎていたのかも。......もう大丈夫です」


そう言いながら、ゆっくりと体を起こす。そっと肩を支えられるが、今度は突き飛ばしはしない。

《私が吸血鬼の生まれ変わりだとしたら......》

優しい母や正義感の強い父や兄はどう思うだろうか。

知っても、それでも娘と言って、妹と言って今までのように接してくれるだろうか。

リーファネルは部屋の中を見回す。

机に椅子、衣類を閉まってあるタンス、棚や本。そして、ベッドの脇に立て掛けてある自分の剣。

変わってはいないのに、どこか違うようにも思う。

我知らず、リーファネルは、自身のネグリジェを手繰り寄せるように掴んだ。程なくして、使用人がリゾットとミルクに蜂蜜を浸けた物を運んでくる。


「ありがとう」


肩の力を抜いて微笑むと、照れたように笑みを浮かべて「いえ」と短く答える使用人。