月下の輪廻

母がいて、今は仕事で家を空ける事も多いが父と兄もいて。騎士の名家で、自分も騎士を目指して日々鍛練をしていて......。

きっと、何かの間違いで悪い夢だったのだろう。

吸血鬼の生まれ変わりなんて......。

リーファネルは安堵の息を漏らす。その時ーー。

(お前は俺の転生体だ)

ドクン......

頭の中で男ーーシュヴァイツの声がして、胸の鼓動が大きく脈打つ。

リーファネルは反射的に母の体を突き飛ばしてしまう。驚きに目を見開く母と目が合った。


「あ......」


咄嗟に言葉が出てこず、リーファネルは自分の手を握り合わせ、枕に頭を乗せたまま顔を逸らす。


「リーファ? どうしたの?」

「すみません、お母様。......夢見が悪くて......」


それ以上は言えない。

蘇る、顎に手を添えられた手の感触。声。憎しみしか映してはいない黒い瞳。

そして、闘っていたであろう男の姿。

《私は、騎士にはなれないっ!》

ぎゅっと瞼を閉じていると、フワッと柔らかい手が額に乗せられて撫でられる。母の手だ。

リーファネルは、ハッと目を開く。


「......そう言えば、魘されていたものね。何か、飲む?」