今日は大事な日だ。

恋人…いや

"元恋人"の命日だから

花を持って


あなたの好きだった



彼岸花



大好きだったよね

あの色が

吸い込まれそうな紅色が

好きって言ってたよね。


最初はよくわからなかった

だって、赤は血の色だし

お墓に置いてるから

好きじゃなかった

好きになれなかった


病院のベットで

白いシーツと同じくらい白い肌の

白い顔が真反対の赤色好きって



思い出したら涙が出てきた

上を向いた

涙が頬を濡らさないように。



ふと思い出した。

朔夜も感情のない眼で



上を向いていた



なにかを呟きながら



最初見た時は

お経でも唱えてるのかと思って

不気味 恐い

なんて思っていたけど



今ならわかる

今だから解る



あの泣きそうな眼は

あの暗い瞳は



私と同じ


私と同じ過去を持っている?






なんて考えすぎか笑

そんなくだらないことを考えながら

彼岸花の花を持って

必要最低限のものだけ持って

初めてのデートで


可愛い! 似合うね! また着てよ!


ってべた褒めしてくれた

黒いレースのワンピースを着て

履き慣れている靴を履いて



歩く


歩く


歩く



気づいたら着いていた



声をかける




(久しぶり。元気してた?)
(最近ね、好きな人が出来たよ)
(あなたが望む通り、幸せになるから)
(安心してよ!)

声をかけながら水を掛ける

そして花を飾って

好きだったお菓子を置いて


線香をつける。

風が吹いて

火がつけにくい なぁ

涙が出てくる。

前のように拭ってくれる人は

もう居ない。


火をつけ、手を合わせる







(なぁ、蘭。)ポンポン


ビクッ


(えっ なんでいるの?)

("朔夜")




(いや、通りかかったらいるからびっくりして声かけようと思ったら泣いてるし。どした?)



(んやー"知り合い"のお墓参りで来たの)



(そっか。)

──────────


((沈黙が辛い))


そう思って

(もうそろそろ日が暮れるし帰るよ。)

喋りながら朔夜の顔を見て

固まって、動けなくなってしまった



泣いていたから。


元から綺麗な顔をしているのに

あまりにも綺麗な涙を流すから


いつも太陽みたいに笑って

女子からもモテる

近所のおば様方からも人気が高い


なのに

今だけは


月に見えた



あの日見た


昼間の白い月のように


なにかを(伝えたい)っていうかのように

とても

見ていられないくらい

ポロポロと

大きな瞳から

大粒の涙が出ていたから


消えちゃいそうな気がして

いなくなっちゃう気がして


もう

大事な人に消えて欲しくないから

目の前で掴めない状態は嫌だから



無意識だった。




((ビクッ!?))




抱きしめていた


涙を流す君に

私は何が出来ますか?



なにも出来なくても

そばにいたいから


私の思ってることが伝わったのか



(大丈夫。居なくならない。)

(でもごめん。今だけは泣かせて)


二言目を言った瞬間



抱き返されていた

堰を切ったように大声で


泣き叫んでいた




(なんでお前なんだよ!)

(なんで居なくなるんだよ!)

(約束も守らないで消えんなよ…)


だいぶ時間が経ったのだろうか

一応言っておくが

私は一人暮らしだ


朔夜は泣き疲れて

寝てしまったから



膝枕をしていた。



彼のお母さんは私が好きだということを知っているから連絡先も知っている。



(もしもし。黒沢ですが)

(蘭です。こんばんは。)

(あら!蘭ちゃん!うちの朔夜が帰ってないのよ…)

(あっすみません。かくかくしかじかでまだ寝ていて…起きたら送っていきます。)

(そんな事がねぇ。お世話かけてごめんね蘭ちゃん…)

(いえいえ。でも朔夜は過去になんかあったんですか?)

(ごめんなさいね、私からじゃ言えないの)

(でも朔夜も蘭ちゃんのこと好きみたいだからもう少ししたら話してくれるんじゃないかしら)

(わかりました。朔夜は送っていきますね)

(ありがとう!じゃあね。)

(はい、では。)

──────────

(ふぅ)

付き合うのは

朔夜の過去を知ってから か…


さて 起こすか



ツイツイ

ムニムニ

ビヨーン


(んぁ…)

(起きた?もう夜だよー)

(んー…あ!?やべーじゃん!めっちゃごめん!あーっと、えーっと うん!送ってく!)

(え?いいよ笑起こさなかった私も悪いし)

(まぁ、一緒に帰ろ!)

(う、ん)ドキドキバクバク

(沈黙にならないといいけど)

──────────

((またもや沈黙))

((フラグ回収乙))



(あー あの…さ)

(ん?)

(急に泣いて抱きついて悪かったな笑)

(やーいいよ笑気にしてないし)


(俺さ!)

(うん!?)ビクッ


(お前…蘭が好きだ。)

(ふーん……へぁ!?)

(What?)

(だから、好きだって言ってんの!)

(じゃあ付き合…(でも

(まだ付き合えない)

(えっ…なんで?)

(ごめん。俺が悪いんだ)

(でも好きなことに変わりはないから!)

(そ…っかぁ うん。いいよ大丈夫。)

(ほんとにごめん)

(やめて、こっちが罪悪感あるから笑)

(おう!んじゃこれからもよろしく!)

(りょーかい!)


そんな会話をしているうちに

私の家に着いた

(んじゃーな!)

(じゃね!また明日!)


そう言って別れた。





──────────





そんなことを知らない私は
キッチンにて

((カップラを作っていた))


麺をすすりながら考える。


付き合えない か


私がダメだったのかな

それとも

過去が原因?



ダメダメ。

辛気臭い顔して食べると不味くなる!

テレビを見ながら食べた

久しぶりに楽しい夕食となった。



布団を敷いて

横になる


明日から話しかける努力をする!


という決意をして。

気づくと眠っていて

夢の中にいた



(離しちゃダメだよ)
(後悔することになるぞ)
(ほんとにそれでいいの?)
(早く起きて彼の家に、朔夜の家に行け!)
(朔夜が好きなら行くんだ!)



1度目が覚めた

汗が頬を伝う


気持ち悪い


嫌な夢だったと思い時計を見る



ケータイは充電しっぱなしで

でも


通知が来ていたが

気づかず寝てしまった。





その行動で

私は後悔したこと

行動ひとつで

少しのズレで

あんなに辛くなるなんて

思いもしていなかった。