日中、サクラとハイメはアイリーンとヴァルテリの執務室にいた。

最初はサクラかハイメの部屋にベビーベッドを設置し、アイリーンだけが常にふたりの側に居るという体制をとっていたのだが、1週間と持たずに、ヴァルテリが政務中でも子供たちの側に居たいといったため、執務室に子どものベビーベッドがあるという奇妙な形になった。

「サクラ~!
ほーら、こっちだよぉ。

ハイメ~
パパを見てね~。」

執務室に子どもたちがいるようになってから、確実にヴァルテリは政務をしなくなっていた。

「ヴィック、いい加減にしてください…
政務はやらなくていいのですか?」

政務2時間、子どもと遊ぶ6時間を毎日のように繰り返していたヴァルテリはやるべき政務が終わらず、机の上に溜まっていた。

子どもが寝ている間はアイリーンもできる限り手伝ってはいたが、それでも政務はたまる一方だった。

「でも、子どもたちがかわいいし、夜はアイリーンを愛したいし…」

「子どもたちがかわいくても、政務はしてください。
昼間やらないなら、続き扉の鍵も入り口の鍵も閉めますよ。

どちらか選んでください。」

アイリーンの部屋へ入れないのはヴァルテリにとって死活問題だった。

「昼間やるから、だから鍵は閉めないで…」

「今日の分と溜まっていた分を今日中に終わらせれば、鍵は閉めません。
もちろん、私も子どもたちが寝ている間は手伝います。」

「ありがとう、ニーナ。
ニーナに会えない夜だけは嫌だ…」



その後、ヴァルテリは渋々ながらも政務をこなしていった。

そして、夕食の時間になるころにはやるべき政務はすべて終わらせていた。

「これで…
ニーナ、今日は寝かせないから。」

「私は寝ますよ。
明日もかわいい子どもたちの世話をしなくてはなので。」

「それじゃあ、約束が…」

「鍵は閉めませんよ。
ひとつのベッドで寝るのも政務を終わらせなければ許さないといっただけで、愛してほしいとは言っていっませんよ。」

「そんな…」

この時、アイリーンはヴァルテリのことをからかってこのように言っていたのだが、ヴァルテリは本気にしてしまったらしく、少ししょげていた。

「嘘ですよ、ヴィック!」

「てことは…」

「ほどほどなら…」

今までの態度が嘘だと分かった瞬間、ヴァルテリは元気を取り戻した。



そしてその日の夜、アイリーンが眠れなかったのは言うまでもない。