今日はアイリーンが正式にヴァルテリの妃として、王太子妃として披露する式典が開かれる日。

本来であれば、婚約者になってから結婚するまでに短くて半年、普通に１年はかかる所をわずか３か月でこの日を迎えた。

その理由としては、ほとんどの課題をこなしたこと、結婚式のときに使用する衣服がそろっているため、そして何よりもすでにヴァルテリとの子どもがおなかの中にいるからであった。

出産予定はまだ半年ほどあるが、時期が遅れるとドレスを新しく作り直す必要があったからであった。

ヴァルテリをはじめ、国王夫妻は新しくドレスを新調しようと言っていたが、アイリーンがどうしてもこのドレスを着たいと申し出たためでもあった。

この日、アイリーンは朝日が昇る前に起き、午後から始まる式典のため、準備をしていた。

最初に湯あみをし、その後に椅子に座り、リンネたちが髪を結ったり、化粧をするのをアイリーンはずっと待っていた。

アイリーンの長くつややかなブラウンの髪はリンネの手により、どんどんまとめられ、最後の仕上げとして細い宝石のついたリボンのようなものを編み込んだ。

そして、化粧は素早く、それでいて華やかに、今日の中で一番アイリーンがきれいになるようにと侍女が施した。

ドレスはアイリーンが自分で手を加えあのドレスを着用する。リンネたちが手早くアイリーンにドレスを着させた。

本当は普段占めている人でもそれとは比べ物にならないくらいコルセットをきつく締めるのだが、今アイリーンのおなかには将来の王子か王女がいる。そめため、今日もまたコルセットを締めることは一切しなかった。

「リンネ、今日くらいはコルセットなしだとラインがきれいに出ないんじゃないの？」

「駄目です、アイリーン様は今大切な時期なのですから！

それにアイリーン様にはコルセットなんていらないと思います。おなかに子どもがいてもとても細いのですから。

アイリーン様、完成です！
アイリーン様が一番きれいで間違いありません！」

「ありがとう、リンネ。
私、何があっても負けない。

だってヴァルテリ様の妻になれるのだから。」

「私は式典には行けませんが、こちらから応援しています。」

アイリーンとリンネはヴァルテリが来るまでの間、ずっと話していた。

「アイリーン、準備は終わったか？」

「終わりました。」

リンネは扉を開け、アイリーンの待つ方へヴァルテリを案内した。

「それでは、私たちは失礼いたします。
時間になりましたら、ショーベリンが迎えに来ます。」

そう言い終わるとリンネは他の侍女とともに部屋を後にした。