翌日から、王妃様とのレッスンが始まった。

このレッスンの予定日数は一年。

早くても半年。

これからは王妃となる者の資質や何たるかを学ぶことがメインとなる予定であった。

「アイリーン、今日から長い戦いが続くけど、耐えられる?

私も先の王妃に教えてもらったときは大変すぎて毎日のように部屋で泣いていたわ。」

「耐えます、何があろうとも。
そしてヴァルテリ様の隣に立つのにふさわしい人間になります。

これから先、どうぞよろしくお願いいたします。

大変と言われ、アイリーンはくじけそうになった。

それでも頑張ろうと思ったのは、ヴァルテリのそばに立ちたいという気持ちが強かったからであった。

「その気持ちがあれば、大丈夫ね。
一緒に頑張りましょう。

でも、最初10日間は刺繍だけをやりましょう。
知識も大切だけど、婚姻式の時に必要になるから。」

「私、刺繍が苦手なのですが、できますか?」

「コツさえつかめば大丈夫。
私も最初は苦手だったから。」

そう言ってカルロティーは刺繍セットを手に持つと、ゆっくりわかりやすいように刺していった。

「最初から、模様を作ろうと思わなくて大丈夫。

同じ長さで刺すことが大切です。

焦らずにやっていきましょう。」

「はい。」

そうしてアイリーンはカルロティーから刺繍道具をもらうとカルロティーの指示のもと刺し始めた。

「ゆっくりと、焦らずに。」

「はい。」

そしてこの作業は日が暮れるまで続いた。