「アイリーン、怖い夢でも見たのか?」

「はい…」

「アイリーン、話してほしい。

アイリーンの苦しみを私にも分けてほしい。」

ヴァルテリはアイリーンの頭をやさしくなでながら、少しでもアイリーンが落ち着くように促した。

「私が皇太子妃になったばかりの夢を見ました。

よくわからないけれど、たくさんの人が王宮に来ていて…

その中に3人の令嬢が私の近くにやってきて、わざと悪口を…」

「思い出すのは辛いかもしれない。

何を言われたのかも教えてほしい。」

ヴァルテリは再び泣き出してしまったアイリーンのことをより強く抱きしめた。

「はい…

私がヴァルテリ様の妻になれたのは体を使ったからだ。

ヴァルテリ様からもらったドレスを破り捨てた。

自分は何もしていないのに、お金さえあれば私たちでもできたのに…

そのようなことを言っていました。」

ヴァルテリは自分の胸に顔を思いっきり隠しているアイリーンのことを離し、自分の目を見るように伝えた。

「アイリーン、よく聞いてほしい。

私はアイリーンの謙虚さがとても素晴らしいと思った。
もし、自分の妻になってくれるのであれば、他に何もいらなかった。

誰もアイリーンの頑張りを認めてくれなくても、私はアイリーンのことを本当にすごいと思っている。

それでもアイリーンがさみしい、心配、そう思うならば、私はもう我慢しない。

本当はまだ我慢しなければならないのだが、俺は今、アイリーンのことが欲しい。

なるべく痛くないようにする。

いいか?」

アイリーンは顔を赤らめながらも小さく頷いた。

「私も、アイリーンも、ヴァルテリ様のことが欲しいです。」

「よかった。
アイリーン、今だけでは我慢できないかもしれない。
それでもいいか?」

「はい、ヴァルテリ様。」

ヴァルテリはリンネにこの部屋から出ていくように、隣の自室にも戻らないように伝え、部屋から出て行ったのを見届けると、そっと部屋の鍵を閉めた。