家にどうやって帰ったのかはほとんど覚えていなかった。

気がついたら翌日の朝でリンネが私の髪を梳いているところだった。

「お嬢様、おめでとうございます。
王宮で生活するようになっても私のことを覚えておいていただけたら幸いです。」

（リンネは何を言っているんだろう？）

「私は婚約はしたけどまだ結婚はしていないからここで生活するわよ？
それにもし王宮で生活するようになったときはリンネも一緒に来てもらいたいし。
もちろんリンネが良ければの話だけど。」

髪を梳いているリンネの手は少し震えているようであった。
まるで泣きそうなのをこらえるかのように。

「お嬢様、ありがとうございます。
お嬢様に一生お仕えさせていただきます。」

そしてアイリーンはリンネに鏡越しに「ありがとう」と告げた。