ルーメンティーに再度即位してほしいという要望はその日のうちにルーメンティーへ伝えられた。

そして伝えられてから数時間後、ルーメンティーの私室にアイリーンは呼び出された。

「お義父さま、入ってもよろしいでしょうか。」

中から入室の許可をもらったアイリーンは部屋の中へ入り、ルーメンティーの目の前のソファーに座るよう促された。

「お話があると伺ったのですが…」

「単刀直入に言う。
私は再度王位に就くつもりはない。

実はもうこの王宮を離れることにしてるんだ。
ロッティーとともに田舎で自給自足をして生活するのが夢でそれを実現するために、屋敷も用意した。

だから、私は国王にはなれない。」

予想外の返事にアイリーンは茫然としてしまった。

「では、誰が国王になるのですか?
サクラだとまだ幼すぎるので、議会から承認されないと思います。」

「国王は即位しない。
ここまで言えばわかるだろう?」

じらすように聞いてくるルーメンティーに対してアイリーンはますます困惑してしまった。

「この国初めての女王が即位する。
アイリーン、この国を治めてみないか。

もともとキャンベル大公家は王位継承権もあるわけだから、問題ない。

それに、私はアイリーンの能力に期待をしている。
常々、ヴァルテリからアイリーンの能力については聞いていたし、私が推薦するのであれば、議会も納得するだろう。

どう?
できそう?」

まさか自分が女王になれと言われるとは思ってなく、アイリーンは驚きを隠せなかった。

「でも…」

「私はアイリーンだから言っているんだ。
自分の力を信じなさい。

もし困ったことがあれば私を頼ってもいいし、キャンベル大公を頼ってもいい。

ひとりで抱え込まなくてもいいんだよ。

それに喪が明ければ婿をもらってもいいのだし。」

「私はこの先、どなたとも結婚しません。
でも、もし何か困ったことがあれば頼りにしてしまうかもしれません。

それでもよろしいでしょうか。」

アイリーンはようやく女王となる決心がついた。

今はまだ即位が決まったわけではないが、ルーメンティーの推薦であればだれも咎めるものはいないはずなので、決まったも同然だった。