そして月日は流れ、サクラとハイメが誕生して3年が経った。

今日はルーメンティーが国王の位から退位し、ヴァルテリが国王になる日である。

本来は子どもが生まれたらすぐ、つまりもう少し早い段階で国王に即位するのが常であった。

しかし、ヴァルテリは子どもとの時間を大切にする、アイリーンとともに子育てをすることを強く望んでいたため、子どもたちが3歳になったら即位すると事前に決めていた。

この考えにはアイリーンも一切異存はなかった。

そして、今日。
アイリーンとヴァルテリが正式に夫婦になった場所でふたりは国王と王妃になる。

アイリーンには段がいくつもついた豪華な白を基調としたドレスが作成され、ヴァルテリには王家の正装である白い軍服が新たに作成された。

サクラとハイメもアイリーンが作成を手伝った衣裳を着ており、時間になるのを今か今かと待ちわびていた。

「サクラ、今日からあなたが王太子になるのよ。
今日の様子、覚えていてくれると嬉しいな。」

王太子に任命されるのが少し緊張しているようで、サクラは元気がないように見えた。

「そうだ、サクラ。
サクラならできるよ。私ができたのだから。」

「お母様、お父様…
怖い…」

サクラとハイメが公の前に出るのは今回が2度目。

初めて公の場に姿をあらわしたのが1歳のころなので、その時の記憶はほとんどなかった。

「大丈夫よ。
私たちもいるし、おじいさまたちもいるわ。

それに、あなたのおじさまも最前列にいるから大丈夫でしょう?」

「アンドレアおじさまもいるの…?
本当だよね?」

「本当だよ。
アンドレアもいるわよ。」

「よかった…!
私、頑張るね。アンドレアおじさまが見てるなら!」

サクラはアンドレアに現在片思いをしていた。

アイリーンとヴァルテリからすると少し複雑なのだが、それでやる気を出してくれるのならばよかった。

「母上、抱っこして。」

そう言って抱っこをせがんだのは弟のハイメだった。

ハイメなりに自分だけが話の輪に入れていないことに気がついたらしかった。

アイリーンはハイメを抱きかかえるとハイメの頭をやさしくなで続けた。

ハイメも落ち着いたらしく、泣きそうだった顔には笑顔があふれていた。