議会が開かれる日、アイリーンは緊張していた。

女性が今まで議会に参加したことがないというだけでなく、今日は裏議題としてバードリー伯爵の尋問をヴァルテリがすることになっていたからだった。

「ニーナ、緊張してるよな。
大丈夫、何があっても俺が守るから。

ニーナは自分の信念を貫いてほしい。」

「わかったわ、ヴィック。
私も私なりに頑張るから、あなたはバードリー伯爵の件だけど気にかけてほしいわ。」

「無理はするなよ。
時間だ、行こう。」

ヴァルテリはアイリーンのことを強く抱きしめた後、アイリーンの手を取り議会場へと向かった。

アイリーンがヴァルテリとともに議会場へ入室したのを見た貴族たちは「なぜ、女が…」と言わんばかりにざわつき始めた。

それでもアイリーンは気にせず、ヴァルテリもアイリーンの手を取り、席へ案内した。

「殿下、ここは神聖な議会場ですよ。
久しぶりに議会に参加すると思えば、女を連れて入室するなど、ふざけている。」

「黙れ。
女性が議会に参加してはいけないなど、どこにも書いていない。

それに、この女性は私の妻、王太子妃アイリーンだということを忘れたわけではないだろう。

私の妻を侮らないでいただきたい、ヒューブナー侯爵。」

早速、アイリーンが議会に参加するのを快く思っていないヒューブナー侯爵がヴァルテリに噛みついてきた。

しかし、ヴァルテリは相手が誰であろうと、アイリーンのことを侮辱したものを許すことはできないと、すぐさま反論した。

その後もアイリーンを追い出そうとする貴族が何人かいたが、その都度ヴァルテリは正論で相手をしていた。