議会は毎週数回開かれていた。

王太子の参加が求められるのは月に一度あるかないかで、それ以外の議会に関しては王太子の参加は義務ではなかった。

そのため、今までヴァルテリは参加せざるを得ないもの以外、参加したことがなかった。

最初はアイリーンもその議会だけ参加するものだと、ヴァルテリは思っていた。

しかし、アイリーンは全ての議会に参加することを強く希望し、結果的にはヴァルテリが折れたのであった。

直近の議会は明後日の午前中に開かれる。
議題は国の財政状況に関するものの予定であった。

「ヴィック、これが去年の財政記録よね? 
これ、明らかにおかしい気がするんだけど…」

アイリーンが示したのは、昨年の予備予算がほとんど残っていなかったことだ。

予備予算とは国内で災害が起きたときなどに使用されるもので、普通であれば、翌年にそのまま繰り越しされる予算であった。

「昨年以前の財政記録をみることはできますか?」

「あぁ、ちょっと待っててくれればすぐに。」

ヴァルテリは執務室を飛び出し、国の重要文書などが保管されているところへ向かった。

そして、過去数年分の財政記録を取り出し、執務室へ戻っていった。

「これも、これもそうです。
ここ数年、国内で災害は起きていないのに、毎年ほとんど残っていません。」

予備予算が翌年に繰り越されていたのは今から6年前が最後だった。

それ以降は毎年新しく予算が出されていたのだった。

「そうか、そういうことだったのか…

なぜ、今まで気がつかなかったのだ…」

ヴァルテリは何かに気がついたらしく、悔しそうに何度も何度も机を叩いていた。

「5年前からですよね。
何か変わったことがあったのですか?」

「5年前、財務大臣が変わったんだ。
それまでの財務大臣は年を取り今までのように議会に参加するのが厳しくなったという理由で。

そして、新しく財務大臣になったのがエルマー・バードリー伯爵。
その伯爵がきっと何かを握っているはずだ。

幸い、明日はバードリー伯爵の参加は義務。
何かわかるかもしれない。

ニーナ、気づいてくれてありがとう。」

「バードリー伯爵家って財政破綻し、数年前に領地を全て王家に返納したっていう…」

「そういうことだ。
バードリー伯爵領は現在ほとんど王家の管轄となっている。
だが、噂によると今は以前とは比にならないくらいお金を持っているらしい。」

アイリーンとヴァルテリはバードリー伯爵が横領をしているのではないかという結論に至っていた。

たとえ、バードリー伯爵が直接関わっていなくても、予算を多く使うときは財務大臣の許可が必要なため、少なからず何かしら関わっているということは明白だった。