わるいひと


不良校につきものの所謂(いわゆる)〝暴走族〟という集団。

名前は〝紅鷹(こうおう)〟。

この辺りで紅鷹を知らない者はいない。

さまざまなの武勇伝をつくり、紅鷹が生み出した伝説は数しれず。

ヤクザさえもこの組織に手を出すのは躊躇(ためら)うという、泣く子も黙る最強集団。

勿論、言わずもがな暴走族自体の顔面偏差値も高い。

そんな彼らの寵愛を一心に受ける〝オヒメサマ〟。

暴走族の連中が文字どおり〝命を懸けて〟守るたったひとりのおんなの子。


物騒なセリフを当たり前のように吐いて、


危ないコトに手を染める。


暴走族なんて時代錯誤も甚だしいのに、


世間一般で見れば反社会的勢力でしかないのに、


…カリスマ的な人気を誇る理由はどこにあるのだろう。


なんでみんなオヒメサマになりたいんだろう。


あたしにはよく分からない。

…でも。

トワが現れてから、

〝向こう側〟について理解しようとしている。

向こう側の世界のことをいつもより考えているのがその証拠だ。


──ポツ、



「…トワ」



──ポツ、

呟いた言葉は、苦い余韻を残しながら雨音に消えていった。