ゲームを進めると、銀髪ストレートの冷たい表情をした女性に、画像が切り替わった。

『あなたなんて私の敵ではありませんわ』

「くっそー、意地悪いなこいつ!」

 ゲームの中には、悪役もいる。

 主人公がスキルを高める邪魔をしてくる悪役令嬢だ。魔法学校のテストの点数で負けると嫌味を言ってくる。

 ストーリーを盛り上げるためか、ちょくちょく嫌味な言葉を残していくのだけど、王子の前ではいい子ぶってあからさまないじめはしてこない。

 悪役令嬢との会話が終わると、また推しのイケメン王子との会話に戻った。その途端に亜里の頬が緩む。

(リアルで恋愛したら、どんな感じなんだろう)

 亜里は妄想すらできないくらい疲れ切っていた。

 患者はほとんどお年寄り。出会いなどあろうはずもない。

 部屋には乙女ゲームと2Dキャラのグッズが溜まっていき、外に出る用事と言えばゲームや声優のイベント、二・五次元の舞台やミュージカルなど。

(いいのよ。オタ活が楽しいんだもん。癒されるんだもん。そのために働いてるんだもん!)

 亜里は思う存分ゲームに没頭し、しっかり記録をしてから、ようやく眠りについた。