「バカ! あなたたちも武人の端くれなら、死ぬときは戦場で死になさい!」

 アリスの王太子妃らしからぬ口の利き方に、隊員たちは驚いて口をつぐんだ。

「生活習慣病をなめないで。肝硬変にでもなってみなさい。すぐには死ねない。長く苦しむことになる」

 肝硬変が何かわからないながらも、隊員たちはアリスの迫力の前に無言で次の言葉を待った。

「臓器にこぶができて破裂し、吐血を繰り返す。足の骨は溶け、歩けなくなる。その痛みは、想像を絶するでしょう」

 ごくりと唾を飲み込む音が、あちこちで聞かれた。

「正常な判断力を失い、心を病み、大切な者に暴力を振るい、家族に見放されて独居になり、苦しみ孤独に喘いで死んでいった者を、私は何人も見てきた。私はあなたたちに、そうなってほしくない」

 いつの間にか、広間はしんと静まり返っていた。

「あなたたちは私の家族です。みんなが健康に、心安らかに暮らしていけるよう、力を尽くそうと思っています。だから協力してほしい」

 のんびり暮らそうと思っていのに、いつの間にか“力を尽くす”なんて言ってしまった。

 自分の言動に、アリス自身が驚く。