「ルーク王子って、国王陛下に嫌われて辺境の地に飛ばされたらしいわよ」

「五大元素の魔法が使えないんですって?」

 どうやら純粋培養された令嬢より、メイドたちの方が世間の情報を得ているらしい。

 胸がずんと重くなるのを、アリスは感じた。

「国境警備隊隊長らしいけど、つまりは王都に置いて置きたくないのよ。魔法を使えない王子は国王陛下の恥なんだわ」

「その国境警備隊だけど、まさに掃き溜めらしいわよ。隊員はみんな暴れん坊で手が付けられないんですって」

 王都に置いておきたくない者を閉じ込めておく体のいい檻、それがルーク率いる国境警備隊。

(もうじゅうぶん)

 アリスは耳を塞ぎ、その場から走り去った。

 メイドの噂話で、ルークが大体どのような立場か、アリスにはわかってしまった。

 王族とは名ばかり、国王に嫌われたはぐれ者。そして、はぐれ者集団の頭。