食事を終えて少し元気が出ると、また考え込んでしまう。

 昨日の舞踏会、つまりゲームの中でのラストシーンは、魔法学校の卒業式も兼ねている。

 ので、今日からアリスは立派なニートだった。

 学生時代、貴族の令嬢たちは火、水、地、風、空の五元素の能力を持つ王子の講習に出る。

 自分の能力を高め、王子の元へ定期テストを受けにいく。

 どの王子の講習に何回出るか、どの元素の魔法能力を高めるかで、各王子との親密度が変わる。

 つまり、貴族の令嬢にとっての学生生活は、集団お見合いのようなものだったといえる。

(神様から与えられたこのスキルは、ゲーム中にはなかった。基本の五元素の魔法とは、また別のものなんだろう)

 紙袋に、血圧計。紙袋はともかく、血圧計は亜里が生きていた異世界のものだ。

(もしや、異世界のものならなんでも召喚できたりして)

 アリスは思い立ち、手を天井にかざした。

「出でよ! スマホとゲーム機と、薄い本!」

 前世で何より大切にしていた物を、それっぽく呼んで召喚しようとする。

 しかし、部屋は静まり返り、アリスの手は空っぽのままだった。

「えー。残念。残念すぎる」

 どうやら、なんでも召喚できるということではないらしい。

 盛大にがっかりしたアリスは、ベッドの上に仰向けに倒れた。