悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています


 亜里の記憶が覚醒して初めて、召喚スキルが発動した。

 今までのアリスは、亜里のゲームの中と同じで、そのようなスキルは持ち合わせていなかった。

「このお嬢さんを運んでいただける? 心的な負荷が過呼吸の原因になるから、とにかくのんびりさせてあげて」

「は、はいっ」

「同じような症状が出そうになったら、とにかくゆっくり息をさせてね」

 今まで後ろの方にいた令嬢の執事が呼ばれて出てきたので、アリスは後のことを頼んだ。

(王子の婚約者が自分じゃないことにショックを受けたのかしら。もう症状が出ないといいけど……)

 楽になったのか、令嬢はアリスに深くお辞儀をし、執事に支えられながらも歩いて会場を後にした。

「ほう……これは面白い。あの娘、変わった能力を持っておるな」

 舞台上から見ていた国王が、笑って顎髭を撫でた。

 王子は呆気にとられ、ソフィアはアリスを睨むように見ていた。

(私の婚約発表なのに、私より目立つなんて)

 アリスは突き刺すようなソフィアの視線には気づいていない。

「さあ、舞踏会の始まりだ!」