悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています


「早く! 袋!」

 叫んでも、誰も動こうとしない。

 アリスがぶち切れそうになった瞬間、高く上げた右手の上で、なにかが光った。

 空から降り注ぐ光が天井を突き破り、アリスの手に集まる。

 光が収束すると、そこには茶色の紙袋があった。

「なにか召喚したぞ!」

 遠くで誰かが叫んだ。

(召喚? 私、紙袋を召喚したの?)

 なんて軽くて薄っぺらい物を召喚したのだろう。

「なんだっていいわ」

 アリスは袋を開き、令嬢の口を覆った。

「大丈夫ですよー。ゆっくり息してくださーい」

 令嬢の荒い呼吸がおさまり始めたところで、アリスは紙袋を口から外した。

「そのまま、ゆっくり、ゆっくり……そう、もう苦しくない」

 令嬢の呼吸は落ち着き、頬の赤みも戻ってきた。

「ついでに血圧計がほしい!」

 アリスが右手を上げて叫ぶと、先ほどと同じように光が降り注ぎ、上腕式血圧計が召喚された。

「よし!」

 カフを令嬢の腕に巻き、さっそく血圧を計る。正常値だったので、アリスはほっと胸をなでおろした。

(夢の中で神様が言っていた“おまけ”って、望んだものを召喚できる能力だったのかな)